Pamela Aronson , 2003, “Feminists Or “Postfeminists”?Young Women’s Attitudes toward Feminism and Gender Relations”, Gender & Society 17(6):903-922.(本文はインターネット公開されていないので、お近くの大学図書館で。)
高橋によるこの論文の簡単な要約:
1990年代の後半に『タイム』誌に、「フェミニズムは死んだのか?」という記事が掲載された。ここで言われている「フェミニズムの死」とは、若い女性は女性運動によるゲイン(gain)をありがたがっておらず、差別について無関心で、フェミニズムを支持しないという、一般に広がっている推定(presumption)のことを言う(p.903)。
*p.904-908まではこれに関する先行調査・先行研究がまとめられており、勉強になります。
アロンソンの問いは、若い女性は、彼女たちの機会(opportunity)や障害(obstacle)についてどう考えているのか。彼女たちは女性差別を どのように知覚し経験しているのか。フェミニズムに対してどのような態度をとっているのか。フェミニズムに対する態度は、人種や階級や、異なる人生経験(アロンソンのこの研究では、大学進学したかどうか、親になったかどうか、仕事を続けているかどうかの3つを指標としている)によって異なるのか。
調査方法は、デプスインタビュー。
調査対象者は、アメリカミネソタ州のセントポール(カトリック系の女子校)に通う9年生(1973年生まれ)から無作為抽出された1000人(彼女たちに対して、1988年に質問紙調査が行われている)のなかで、引き続き調査に協力をしてくれた女性たち40名。調査期間は1996-97年で、調査時彼女たちは23-24歳だった。
これまでの「若い女性のフェミニズムに対する態度」調査の多くが、白人中流階級女性を対象にしがちだった点を反省し、アロンソンは、インタビュイーの33%を有色人種にしている。インタビュイーの構成を出身階級別にみると、31%労働者階級、48%のミドル階級、21%アッパーミドル階級となっている。
調査の結果、
「2、フェミニストだが、しかし(I'm a feminist, but...)」タイプ、
「4、フェミニストではないが、しかし(I'm not a feminist, but...)」タイプどちらとも決めていないとする「3、フェンス・シッター(fence sitter)」(31%、)タイプが、「フェミニズムに対してアンビバレントな態度を示す人」ということになるが、これを合わせると全体の59.5%(25名)となる(Aronson 2003:913-917)。
こんなわけで、1990年代にはフェミニズムの死とか、フェミニズムは終わったとか言われてきたが、実際の若い女性のフェミニズムに対する態度を見ると、フェミニストとは名乗らないが、フェミニズムに反対するわけでもないという「あいまいな態度」を取る人が大部を占めているということがわかったよ。
という論文です。
女の子たちがどういうことをインタビュー内で語ったのかについての具体的な発言も色々書いてあるので、ご関心の向きはぜひ本文をおよみくださいませ。