ポストフェミニズムに関するブログ

ポストフェミニズムに関する基礎文献を紹介するブログ。時々(とくに大学の授業期間中は)ポスフェミに関する話題を書き綴ったり、高橋幸の研究ノート=備忘録になったりもします。『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど :ポストフェミニズムと「女らしさ」のゆくえ』(晃洋書房、2020)、発売中。

ポストフェミニズム

恋愛に性別役割は必要か? 

1 なぜ「男は『手を出し』、女は『手を出される』」という慣用表現が成りっているのか ジェンダー論関連の授業を大学やっていると、「異性愛的な恋愛や性の場面でよく言われる『手を出す/手を出される』や、『お持ち帰りする/お持ち帰りされる』という主…

「枕営業されること」とか「女子割」とかについて:女性向け記事サイトの記事に関するメモ

女性向け記事サイトが充実しておりますよね。 そこで今日収集した、興味深い話をまとめておこうと思います(メモ代わり)。 telling.asahi.com 「おっさんたちにすれば純愛のつもりかもしれないけど、女の方が立場が下なんだから断れるわけない。偉くなった…

プロテスタントにおけるロマンティックラブとは何なのかまとめ

1. ytakahashi0505.hatenablog.com 前回、ノッターさんのご著書を論点整理しながら、欧米のプロテスタントたちが確立した狭義の意味での「ロマンティック・ラブ」が日本において成立したことはなかったということを論じてきました。 今日は、その狭義の意…

本『性的モノ化とは何か(仮)』の趣意書  

なぜ性的モノ化をテーマにした論文集を企画するのか この数年間で、オンライン上のフェミニズムである「第4波フェミニズム」が登場し、存在感を増してきている。第4波フェミニズムのなかの中心的論点の一つとなっていると考えられる「性的モノ化」を主題とし…

アメリカの10代の性行動の消極化は1990年代から継続中:NSFGデータ分析の報告書から

1. ytakahashi0505.hatenablog.com の続きです。 とりあえず、アメリカの疾病対策予防センター(center for disease control and prevention, CDC)のnational center for health statistics(NCHS)がやっているNational Survey of Family Growth(NSFG)の…

アメリカにおける性行動の不活発化:GSSデータ18歳から44歳の成人男女を分析した論文の紹介

1.概要 性行動の不活発化は、アメリカでも起こっています。 Peter Ueda, Catherine H. Mercer, Cyrus Ghaznavi, Debby Herbenick, 2020, "Trends in Frequency of Sexual Activity and Number of Sexual Partners Among Adults Aged 18 to 44 Years in the…

プロテスタンティズムの倫理とロマンティックラブの精神:デビッド・ノッター『純潔の近代』の論点整理から

1.近代的主体を構成する原理としてのロマンティックラブ かの有名なプロ倫(『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』)にオマージュを捧げつつ、「プロテスタンティズムの倫理とロマンティックラブの精神」を、現在語るべきだという話をしたいと思…

後期近代における恋愛論の重要性1

1. 個人の「自由」の拡大が共有された社会的な「善」になっている現代において、恋愛や性といった「個人的なもの」をめぐる議論は、ますます重要になっている。 再帰性が高まる後期近代論者のギデンズ、バウマン、ベックらが親密性や愛についての論考を書…

承認欲求とは何か2:なぜ人はアイドルになりたがるのか

ytakahashi0505.hatenablog.com ( 一応続きだけど、内容的には上記を読んでなくても分かるようになってます。つまり、あんまりつながってない。) 1. 現代の承認欲求について主題的に扱っている本として、 山竹伸二, 2011, 『「認められたい」の正体:承…

ネオリベラリズムとは何か1:資本のグローバリズムによるネオリベラリズム政権の登場(全3回の予定)

ネオリベとか新自由主義という言葉は、近年グローバリズム批判と政権批判のさいによく聞くワードですが、バズワードと化しているところがあります(なぜバズワードになっているかというと、端的に言ってしまえば、広義の意味での左翼は、マルクス主義が凋落…

『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど』著者解題(2020年12月17日)

*某フェミニズム研究会で拙著の検討会をしていただきました。その時に出した著者解題をアップしておきます。 著者解題 高橋幸『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど:ポストフェミニズムと「女らしさ」の行方』(2020、晃洋書房) 概念整理 ポ…

認識的不正義:「表象はなぜフェミニズムの問題になるのか」(小宮友根)(基礎文献4)の読解と考察

1.認識レベルの不正義 websekai.iwanami.co.jp 上記の小宮論考は、私たちがいま使っている言語体系や思考枠組みにおいて、女性に対する暴力や抑圧を言い表す言葉が不十分であるという「認識的不正義」があるということを論じたものです。 ・小宮さんが「コ…

【#シンこれフェミ 3-1】ASAに見る、広告における性別ステレオタイプ表象の自主規制

1. 社会における表現の問題に関しては、「規制すべきか否か」をバトっていても、あまり意味はありません。「表現の自由」と「人権保障」の対立が起こったときに本当に議論すべきことは、表現のインフラを具体的にどう設計していくのか(既存の制度のどこを…

【#シンこれフェミ 3-2】公的広報におけるジェンダー表現ガイドライン策定の経緯と現在:広告規制に関するこれまでのジェンダー論の議論1

90年代後半に、国及び地方自治体の行政機関における広報ガイドラインが策定され運用されてきた経緯がざっくりとまとめられている論考として、ジェンダーの観点からメディア論研究をしてこられた大家・諸橋先生の以下のような論考があります。 www.koho.or.jp…

【#シンこれフェミ 3】規制の問題を考えるときには、まずは「わいせつ」と「性差別」を区別しよう:堀あきこさん「性表現の規制をフェミニストは求めていない」(基礎文献1)を読んで考えたこと

wezz-y.com 1.「わいせつ/性差別」の区別は重要 まず、堀さんは「わいせつ」と「性差別」を区別されています。これ重要です。 堀さんの議論によると、性器表現などの「わいせつ」は法規制されてきたが、フェミニズムにとっては「わいせつ」を規制すること…

【#シンこれフェミ 1】坂爪さんのコーディネートによる青識さんとの討論会をなぜやるのかについて(フェミニズム研究者向け)

坂爪さんのコーディネートで、青識さんと討論会をします。 高橋が出ていく理由 1、坂爪本に良い意味で煽られたため:坂爪さんの今回の新刊本『「許せない」がやめられない』(2020)に煽られたところが一番大きいです(笑)。 坂爪さんは、今回さらに新しい…

「女性の性的主体化形式」論文の引用文献でオンラインで読めるものまとめ

私の「女性の性的主体化形式」に関する論文の引用文献のうち、オンライン上で読めるものと、その場所をまとめました。 American Psychological Association. (2007). Report of the APA task force on the sexualization of girls, Zurbriggen, Eileen L., C…

女性の性的主体性についての論文を投稿しました。その引用文献の一部を紹介。

(ふわっとした前置き長めです) ラディカルフェミニズムは、現代社会の「男性による女性支配」や「男社会」は性的なもの(セクシュアリティ)を通して完成しているのだと言いました。たしかに、女性を性的対象として捉えたり扱ったりするときには、人や場合…

第三波フェミとポスフェミの共通点と相違点(Piepmeier 2006)

Alison Piepmeier, 2006, “Postfeminism vs. the Third Wave“ Electronic Book Review, March 17, 2006, の内容を紹介しつつ、私が第三波とポスフェミの違いをどう同定しているかを書いておきまーす。 electronicbookreview.com 第二波フェミニズムから自分…

ポストフェミニズムとは何なのか

ポストフェミニズムとは、ネオリベラリズムの登場を背景とする新しいフェミニズムのことを指します。ポストモダンが「モダン」の続きでありつつも、モダンの新しいモードのことを指すように、そしてポストコロニアリズムが新しい形態によるコロニアリズムの…

こういうジェンダー論の教科書がほしい 

ジェンダー論の教科書として、こういう論点がまとまっているものがあればいいのに、と思っていたのだけれどなかったので、自分でレジュメつくった。(2019年度にやった「身体文化論」の授業レジュメのいくつかを公開します) 1.売買春をめぐる現在の世界の…

ポスフェミ基礎文献:三浦玲一(2013)について

三浦玲一, 2013, 「ポストフェミニズムと第三派フェミニズムの可能性:『プリキュア』、『タイタニック』、AKB48」, 三浦玲一・早坂静編著『ジェンダーと「自由」:理論、リベラリズム、クイア』彩流社: 59-79. 1.「新しい左翼」の模索の延長線にあるポス…

ANTや新唯物論によって、社会学理論はどう更新されうるのか:その方向性について

1. 新唯物論とかANTとかをざっくり読みつつ思っているのだけれど、考えるべきは、これらを社会学に持ち込むことで、社会学理論はどう更新されるのか?だ。 例えば、主体/社会構造が循環的にお互いを構成しているというギデンズ流(構造化理論)の「主体/…

女性の男性に対する敵対的/好意的セクシズムについて

【論文紹介】阪井俊文, 2007, 「セクシズムと恋愛特性の関連性の検討」,『心理学研究』第78巻,第4号:390-397. セクシズムとは「人を性で区別すること」くらいの意味であり、性差別(sex discrimination)とは異なります。 敵対的セクシズムや好意的セクシズ…

現在「女性の性的客体化」を私たちはどう論じていくべきなのか

「全ての女性が、性的客体化によって傷ついている」という言い方には、ちょっと無理がある。「性的客体化」という概念そのものをぶち上げて流通させるところから始めなければならなかった1970年代には、そういう言い方も戦略としてありだったが、現代ではも…

【論文紹介】「ガールパワーとチックリット」『ポストフェミニズム:文化的テキストと理論』([2009]2018)

Stéphanie Genz and Benjamin A. Brabon, 第1版 2009年、第2版 2018年,Postfeminism: Cultural Texts and Theories の(『ポストフェミニズム:文化的テキストと理論』)中の 第4章 "Girl Power and Chick Lit" (「ガールパワーとチックリット」)の要約翻…

【論文紹介】Sex is Power Scaleについて

Sex is Power Scale(SIPS)というのがありまして、これ重要な気がしています。詳しくいうと、「自分の性は力の源泉だ」(Self-sex is Power Scale(S-SIPS))と「女性一般の性は力の源泉だ」(Woman-sex is Power Scale(W-SIPS))の二つに分かれています…

【論文紹介】誰かの性的客体となることを通した女性たちの性的主体化について

Mindy J. Erchull & Miriam Liss, 2014, "The Object of One’s Desire: How Perceived Sexual Empowerment Through Objectification is Related to Sexual Outcomes", Sexuality & Culture 18:773–788 (=「誰かの性的客体となること:性的客体化を通した性…

好意的性差別について

性差別(sexism)には、「敵対的性差別」だけでなく「好意的性差別」もあるということを述べ、この二つを組み合わせた「両価性性差別尺度( Ambivalent Sexism Inventory、ASI)」を開発したのは、Peter Glick & Susan T. Fiske(1996)であります。 Peter G…

「ポストフェミニズム」と言うことの認識利得

(*単行本用の原稿として書いていたものですが、どこにも入らなくなってしまったので、ここにアップします。紙に印刷して本の形態で読む用の原稿であり、ブログ用の文体じゃないので、若干読みづらいかもですが、すいません) 「ポスト(post)」とは、基本…