ポストフェミニズムに関するブログ

ポストフェミニズムに関する基礎文献を紹介するブログ。時々(とくに大学の授業期間中は)ポスフェミに関する話題を書き綴ったり、高橋幸の研究ノート=備忘録になったりもします。『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど :ポストフェミニズムと「女らしさ」のゆくえ』(晃洋書房、2020)、発売中。

2018-01-01から1年間の記事一覧

『岡崎京子論:少女マンガ・都市・メディア』(2012、杉本章吾、新曜社)

杉本章吾さん(1979年生まれ)の『岡崎京子論:少女マンガ・都市・メディア』(2012、新曜社)を読みました。 私(1983年生まれ)は岡崎京子を通過せずにきた人なので、きちんと岡崎作品を読んでいないのですが、杉本さんの説明が懇切丁寧で、岡崎京子がとて…

村田沙耶香『コンビニ人間』評(3)

(続き) 4.『コンビニ人間』の構造:ディストピア小説としての『コンビニ人間』 大きな社会と戦う正義のヒーローとしての古倉さんという読み方は以上のように可能であるのだが、しかし、『コンビニ人間』という作品を論じるときに、このような「社会問題的…

村田沙耶香『コンビニ人間』評(2)

(続き) 2.『コンビニ人間』の「新しさ」:労働と人間性 「personal(個人的なものの)領域/social(社会的なものの)領域」という区別に基づいて社会を編成している民主主義・自由資本主義社会において、経済的領域での労働は人間らしさや個性を剥奪され…

村田沙耶香『コンビニ人間』評(1)

第43回 哲学カフェ横浜(2018/12/05)で報告させていただいた村田沙耶香『コンビニ人間』評をアップします。 文芸批評とはある作品がもっている思想的可能性を展開して論じるものだと、私は考えています。これはとても重要な仕事だと思うので、これからも色…

YouGovによる「自称フェミニスト率」世論調査

today.yougov.com YouGovの調査は、毎年だいたい「あなたはフェミニストですか?」という問いに対してYes/No/Not Sureの3つで答えさせています。 その調査によると、2016年よりも2018年の方がアメリカ人のフェミニスト率は増えているという結果がでています…

アメリカのフェミニスト割合(2016年世論調査結果)

www.washingtonpost.com ワシントンポストとKaiser Family Foundationが行った国民世論調査によると、女性の60%、男性の33%がストロングフェミニストもしくはフェミニストと答えているらしい!多い! 日本で同様の調査がやられているのを見たことがないけ…

【翻訳】Gill, Rosalind, 2007, 「ポスト・フェミニズム・メディアカルチャー:感受性の要素」

ポスト・フェミニズムとかポピュラー・フェミニズムのあたりの研究だと、やっぱりカルスタをフェミニズムの立場から担ってきた大御所Angela McRobbie(1951-)がよく引かれるのですが、 次世代(60年代生まれ世代)の重要論者の一人は、Rosalind Gill(1963…

【翻訳】(Heywood 2005)ポスト・フェミニズムとは

Heywood, Leslie L., 2005, The Women's Movement Today: An Encyclopedia of Third-Wave Feminism, Greenwood.の「ポストフェミニズム」の項目(p.252)の翻訳 https://www.amazon.co.jp/Womens-Movement-Today-Encyclopedia-Third-wave/dp/0313331332/ref=…

赤坂憲雄 『3.11から考える「この国のかたち」:東北学を再建する』(2012、新潮選書)

「東北学」の提唱者・赤坂憲雄は、震災直後から発信していた人の一人である。 2011年4月に始まった政府の「東日本大震災復興構想会議」のメンバーであり、 また遠野文化研究センターの所長として震災者支援活動をするだけでなく、被災地を歩き回って思考を紡…

ジェントルマンとミソジニーの違い

(モテの話はちょっと、置いといて。) ジェントルマン文化が家父長制的(パトリア―キー)でパターナルだったことは歴史的な事実であり、ミソジニー(女性嫌悪)感情を基盤にしていたことを否定することもかなり難しいと思います。が、現代のイギリス人男性…

『Can Cam』の「めちゃ❤モテ」の論文書きました

第25号『女性学』(2017、2018年3月発行)に、 高橋幸, 2017, 「「モテたい」願望の表明による「女らしさ」の強化:2000年代『Can Cam』における「モテ」表象の分析」, Vol.25:84-92. という研究ノートを載せていただきました。 まだ日本女性学会のHPは更新…