ポストフェミニズムに関するブログ

ポストフェミニズムに関する基礎文献を紹介するブログ。時々(とくに大学の授業期間中は)ポスフェミに関する話題を書き綴ったり、高橋幸の研究ノート=備忘録になったりもします。『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど :ポストフェミニズムと「女らしさ」のゆくえ』(晃洋書房、2020)、発売中。

日々の見たもの、読んだもの、考えたこと

5月5日はお誕生日なので......

今日、無事40歳を迎えることができました。これまで支えてくださったみなさん、どうもありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いします。 大学生の頃と比べて文化作品との接し方が変わったなぁということを、ここ最近、けっこう繰り返し、いろ…

「レズビアン・ファルス」の可能性について:ジュディス・バトラーの『問題=物質となる身体』序文~第2章のレジュメ

横浜フェミニズム研究会で今日報告させていただいたレジュメをアップします。 バトラーによるレズビアン・ファルスの構想、重要。 どこまで使えて、どこは使えないのかをまとめました。 https://drive.google.com/file/d/1LeER5E2gf-zGCSForM5ZBENgLrcev6Zp/…

レヴィナスの二つの正義(責任)(現代思想論文で十分に議論を展開できなかったけど、大事だと思っていること)

『現代思想』(2021年9月号)の「ジェンダー平等な恋愛にむけて」という論考で、紙幅と論旨の関係上、私はレヴィナスの女性論を「セクシズムである、以上」としてぶった切ってしまったのですが、実際には、レヴィナスはその女性論に限って言っても重要な思想…

KADOKAWAが女性向け自己啓発+恋愛論なかんじの本を大量に出している件について

なんかすごい文献群を発見してしまった。女性向け、女性ライター(ついったらーやYoutuber)が書いている日常エッセイの体裁を取った自己啓発と恋愛指南書がまじったかんじの本を、KADOKAWAが大量に出している。 だいたい2017年から始まっていて、2021年現在…

「枕営業されること」とか「女子割」とかについて:女性向け記事サイトの記事に関するメモ

女性向け記事サイトが充実しておりますよね。 そこで今日収集した、興味深い話をまとめておこうと思います(メモ代わり)。 telling.asahi.com 「おっさんたちにすれば純愛のつもりかもしれないけど、女の方が立場が下なんだから断れるわけない。偉くなった…

『アイドルになりたい』(2017、中森明夫ちくまプリマ―新書)の問題点

アイドル幻想を少女に押し付ける大変に気持ち悪い本:『アイドルになりたい』(2017、中森明夫、ちくまプリマ―新書) 私は基本的に、露骨な批判は書かない人なのですが、これはあまりにも問題なので、指摘しておいた方がいいような気がしました。 問題点は、…

批評界隈の「圧をかける」というあり方について:マッチョさとどう折り合いをつけるか

1. 新情報を提供するタイプの文章ではなく、ある程度知られていることに関して「論じる」ようなタイプの文章を世に出すときって、「書き手である私はこのことについてはよく知ってますから、これだけ見てますから、ここまで考えて書いてますから」というの…

『エヴァ』は身も心も一つになることを称揚している作品なのでは:エヴァ解釈についての補足

エヴァ解釈の話。 ytakahashi0505.hatenablog.com 私は前回のエントリーで、「人類補完計画は、人類の融合と性的「融合」(セックスのこと)を重ね合わせて表象されているが、主人公のシンジにはその誘惑をふりはらうことが期待されていた。ミサト、リツコ周…

LAMP IN TERREN

最近のロックだったらLAMP IN TERRENがいいですって教えてもらっていたのだが、この数日しっかり聴き、それ以降、打たれてけっこう茫然自失している。 松本大が書く詩の特徴は、「キミ」が具体的な像を結ばないところにある。これは確信的にやっていると思う…

承認欲求とは何か2:なぜ人はアイドルになりたがるのか

ytakahashi0505.hatenablog.com ( 一応続きだけど、内容的には上記を読んでなくても分かるようになってます。つまり、あんまりつながってない。) 1. 現代の承認欲求について主題的に扱っている本として、 山竹伸二, 2011, 『「認められたい」の正体:承…

承認欲求とは何か(社会心理学講義で喋ったこと+α)

承認欲求について喋った回の内容を書いておきます。 1. とりあえず、承認欲求はマズローらパーソナリティ心理学によって、こう整理されてきました。(下図は『心理学』有斐閣、2013、p.194より引用) 下位の欲求が満たされることで、より上位の欲求が湧い…

合意形成プラットフォームでのフェミ議論とかできたら面白いんだけどなぁ、技術者求む!

合意形成プラットフォームvTaiwanのような仕組みで、現在のフェミニズム的議題をめぐる布置のようなものを描けたら面白いなと思った。 vTaiwanの仕組みの詳しい説明として、こちらがわかりやすい。 https://note.com/a28szk/n/n0c23db878c48 他のSNSと同じよ…

「空洞な身体」に宿る憑依 ――中上健次の身体論――

実は、私は一時期「もう研究者になるのムリかも、正規ポスト得られなさそう、物書きとして生きていこう」と思っていた時期があって、その頃、『群像』の新人評論賞に応募したことがありました。30代中盤、2010年代のこと、応募したのは2018年春のこと。 群像…

虚淵玄脚本作品について

【*若干ウツ注意かも。読むとウツ症状が深刻化するかもしれません、今、精神状態がやばい人は読むのをやめましょう】 1. ウツ的な問いというのがあって、問うてもしかたないと思って問いすらしないような、この世界に対する根底的な疑念、違和感、諦め、…

『PSYCHO-PASS サイコパス』では2021年に新自由主義が終わっていたけど、それってどういうことだったんだっけ

1. テレビアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』(第1期、2012-2013年)は、西暦2112年開始設定のSFものですが、このセカイでは2020年の世界恐慌をきっかけにして、2021年に新自由主義経済が崩壊しています。(以下、基本的には、公式サイトhttps://psycho-pa…

ニヒリズムの極北ニーチェの魔力

0.人生を変えるものとしてのニーチェ 私は高校生の時にニーチェ思想にぶち当たってしまったために、人生が変わってしまった感がある。いや、そんなことを言えば、それ以外にも色々なあやまちはあったのであって(思想的に「あやしげ」(*)な人にばかり恋…

社会構築主義以降の社会記述法 ストラザーン『部分的つながり』に見るハラウェイの可能性について

今年の夏は海外出張もなく(=研究費が取得できていないということ(泣))、自宅時間がけっこうとれたので、読みたかった本をたくさん読めました。とっても幸せであります。夏休み一生続けばいいのに。と願ったところで続くわけでもないので、自分の中の区切…

一般女子に受けの良い『おっさんずラブ』について

腐女子でない「一般の女の子」の『おっさんずラブ』(以下、さしあたり2018年4月21日‐6月2日に「土曜ナイトドラマ」枠で放映された前7回のドラマを指す)好き率が高い。 今年(2019年)のゼミ中や、講義後に個別的に話に来てくれる女の子たちとの雑談のなか…

NHKがキズナアイを起用したことを批判するフェミニストを批判する女性たちにみる、ポスト・フェミニズム的態度の特徴2つ

いまさらですが、NHKキズナアイ問題に気づきました。遅すぎて、すいません。 このブログはポスト・フェミニズムをテーマとしているので、下記のまとめについて検討します。 togetter.com ポスト・フェミニストの最も簡潔な定義は、フェミニズムに違和感を示…

00年代東浩紀再考(2)「動物化」とは何だったのか

「00年代東浩紀再考(1)」の議論をまとめると、 「大きな物語」がなくなると、救済されないっていうか、なんていうかちょっと悲しい気持ちがする。この悲しい気持ちについてきちんと考えてみようというのが私の主張でした。 「00年代東浩紀再考(2)」では…

00年代東浩紀再考(おまけ)恋愛=実存と思想の連関

おとといからやっている、東浩紀を読み直す作業で発見した、おまけみたいなもの。 思想と恋愛(実存の問題)のつながりについて、けっこう私的には示唆的だったので、共有します。私は昨年、現代の若者の恋愛観とか草食化とか、草食化した後の異性愛関係とし…

00年代東浩紀再考(1)「大きな物語からデータベース消費へ」を受けて2010年代現在考えるべきこと

1.はじめに 私は高校生から学部生時代に小林秀雄、柄谷行人、吉本隆明、江藤淳をけっこうがっつり読んできました。大学院生になった頃、そろそろ時代順でいくと大塚英志、東浩紀あたりかなーとなったのですが、なぜか当時は大塚さんや東さんが読めなかった…

『岡崎京子論:少女マンガ・都市・メディア』(2012、杉本章吾、新曜社)

杉本章吾さん(1979年生まれ)の『岡崎京子論:少女マンガ・都市・メディア』(2012、新曜社)を読みました。 私(1983年生まれ)は岡崎京子を通過せずにきた人なので、きちんと岡崎作品を読んでいないのですが、杉本さんの説明が懇切丁寧で、岡崎京子がとて…