What is sexual wellbeing and why does it matter for public health?
の訳です。
この論文は、公衆衛生(パブリックヘルス)においてセクシュアル・ウェルビーイングの考え方を取り入れる必要があること、そしてその場合のセクシュアリティとは、次の4つの異なる側面からなるものとして考える必要があるということを論じています。セクシュアル・ウェルビーイングは、セクシャルヘルスともセクシャルジャスティスとも、セクシャルプレジャーとも異なるものだというのが、この論文の主眼です。
まず、セクシャルヘルス。これは性感染症の防止や性的暴力の防止、性機能の問題などからなります。
セクシャルジャスティスは性的権利や性的市民権などからなり、社会的なセクシャルマイノリティ差別をなくしていくことなどを指します。
(上図は、上記記載論文より引用)
セクシャルプレジャーとは、性的経験に関する身体的・心理的な満足のことを指します。これは性的権利に関する社会的・文化的条件が揃うことで達成される。その条件というのは、性的平等が守られていて差別がなく、自律性autonomyや身体の不可侵性bodily integrityが守られており、表現の自由があるなどです。
もう少し具体的にいうと、性的自己決定self-determination、同意 consent,、安全性、プライバシーが守られること、自信confidence、性的関係に関してコミュニケーションしたり交渉したりできるか(その力abilityがあるか)などで測定できます。
・セクシャルプレジャーに関して、この論文では、出来事関連指標(性的レパートリー、タイミング、異なる性的実践に対する寛容性、オーガズムの頻度、避妊しているかなど)と人物関連指標(コミュニケーション、交渉、信頼など)の二つのカテゴリーで測定することが提案されています。
最後に、セクシャル・ウェルビーイング。セクシャルウェルビーイングの中心となるのは、セックスポジティビティ。ポジティブであるほど、セクシャルウェルビーイングが高まると考えられています。セックスポジティブは、性的尊重(リスペクト)があるかどうかや性的自尊感情の高さ、自分のセクシュアリティに安心感を持てていること(comfort with)、過去の性的経験に対する許し、性的関係におけるレジリエンス(自分が望むような性的相手が得られなくてもメンタルを維持できる精神的回復力なども含む)、性的人生の自己決定などのことなのだそうです。
英語圏では一般的に、セクシャルウェルネスは、「生生活がうまくいっている」ことを指すときに用いられることが多く、またファーマシー(ドラックストアー)は精力剤やサプリメントなど(vaginal tightening gel, nutritional supplements, and fertility aids)をセクシャルウェルビーイングと呼んで売り出したりしているが、セクシャル・ウェルビーイングというのは、人生全般にわたる性へのポジティブな感じ方や態度のことであるというのが、この論文の内容です。
この4つの側面の整理は、わかりやすくて良いし重要だなと思ったので、紹介してみました。
セクシャル・ウェルビーイングに関する英語のウェブ記事とかをみてると、「よく食べ、よく眠り、運動し、自分自身のための時間を持つといったすべてのことは、性的健康に役立つ!」「健康に生きることが、性欲を活性化し、身体に関する自信を改善させ、性的問題の手助けになるのだ」みたいな学者のコメントとかを載せてたりして、なんか熱量すごいなと思っています。この雰囲気が性を人権として捉えるセクシャルウェルネスなんだよなぁ。