ポストフェミニズムに関するブログ

ポストフェミニズムに関する基礎文献を紹介するブログ。時々(とくに大学の授業期間中は)ポスフェミに関する話題を書き綴ったり、高橋幸の研究ノート=備忘録になったりもします…!

虚淵玄脚本作品について

【*若干ウツ注意かも。読むとウツ症状が深刻化するかもしれません、今、精神状態がやばい人は読むのをやめましょう】 1. ウツ的な問いというのがあって、問うてもしかたないと思って問いすらしないような、この世界に対する根底的な疑念、違和感、諦め、…

『PSYCHO-PASS サイコパス』では2021年に新自由主義が終わっていたけど、それってどういうことだったんだっけ

1. テレビアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』(第1期、2012-2013年)は、西暦2112年開始設定のSFものですが、このセカイでは2020年の世界恐慌をきっかけにして、2021年に新自由主義経済が崩壊しています。(以下、基本的には、公式サイトhttps://psycho-pa…

こういうジェンダー論の教科書がほしい 

ジェンダー論の教科書として、こういう論点がまとまっているものがあればいいのに、と思っていたのだけれどなかったので、自分でレジュメつくった。(2019年度にやった「身体文化論」の授業レジュメのいくつかを公開します) 1.売買春をめぐる現在の世界の…

日本の唯物論フェミニズム(マルクス主義フェミニズム)受容の盲点:ヘテロセクシズム批判という文脈の抜け落ち

マルクス主義フェミニズムとは、1970年代から80年代に登場してフェミニズム理論を形成した一つの思想潮流で、「性支配」の物質的基盤(下部構造)の分析を重視する立場を特徴とする。物質的基盤(下部構造)分析は、おもに経済学的・政治的制度の分析になる…

ポスフェミ基礎文献:三浦玲一(2013)について

三浦玲一, 2013, 「ポストフェミニズムと第三派フェミニズムの可能性:『プリキュア』、『タイタニック』、AKB48」, 三浦玲一・早坂静編著『ジェンダーと「自由」:理論、リベラリズム、クイア』彩流社: 59-79. 1.「新しい左翼」の模索の延長線にあるポス…

ANTや新唯物論によって、社会学理論はどう更新されうるのか:その方向性について

1. 新唯物論とかANTとかをざっくり読みつつ思っているのだけれど、考えるべきは、これらを社会学に持ち込むことで、社会学理論はどう更新されるのか?だ。 例えば、主体/社会構造が循環的にお互いを構成しているというギデンズ流(構造化理論)の「主体/…

フェミニストたちの言う新唯物論について2: ブライドッティ『ポストヒューマン』(2013=2019)第1章まとめ

本ブログ筆者・高橋が、「ポスト」フェミニズムや「ポスト」ヒューマニズムを重視するのは、「ポスト」以下にくっついている「フェミニズム」や「ヒューマニズム」の思想を、新しい時代や社会の状況を踏まえて、練り直す必要があると考えているからです。(…

フェミニストたちの言う新唯物論について

1. ジェンダー、フェミニズム領域において社会構築主義は意義深いものでした。「男/女」という性別をジェンダー(歴史的文化的に構築されてきた性差)とセックス(生物学的性差)に分け、前者を問題にするという形で、性別の脱自然化( denaturalized )…

ジンメルの「個性(Individualität)」概念の現代的有効性:後期近代の「個人化」のなかで(高橋幸)要約

ジンメル研の会報に載せてもらう要約文作った。昨年のジンメル研での報告の要約です。 ポストフェミニズムにはあまり関係していないけれど、せっかくなので公開させてください。ジンメル研究会会報は商業媒体雑誌ではないので、たぶん、ウェブ公開しても怒ら…

女性の男性に対する敵対的/好意的セクシズムについて

【論文紹介】阪井俊文, 2007, 「セクシズムと恋愛特性の関連性の検討」,『心理学研究』第78巻,第4号:390-397. セクシズムとは「人を性で区別すること」くらいの意味であり、性差別(sex discrimination)とは異なります。 敵対的セクシズムや好意的セクシズ…

#metooというハッシュタグ運動の拡がりについての論文を紹介

「2010年代中盤からのファッションとしてのフェミニズム」を読み解くための文献紹介シリーズ1:#metooというハッシュタグ運動の拡がりについて 論文1.Hugo Browne-Anderson, 2017, "How the #MeToo Movement Spread on Twitter:What can data science tel…

2020年を迎える現在「女性の性的客体化」を私たちはどう論じていくべきなのか

「全ての女性が、性的客体化によって傷ついている」という言い方には、ちょっと無理がある。「性的客体化」という概念そのものをぶち上げて流通させるところから始めなければならなかった1970年代には、そういう言い方も戦略としてありだったが、現代ではも…

【論文紹介】「ガールパワーとチックリット」『ポストフェミニズム:文化的テキストと理論』([2009]2018)

Stéphanie Genz and Benjamin A. Brabon, 第1版 2009年、第2版 2018年,Postfeminism: Cultural Texts and Theories の(『ポストフェミニズム:文化的テキストと理論』)中の 第4章 "Girl Power and Chick Lit" (「ガールパワーとチックリット」)の要約翻…

【論文紹介】Sex is Power Scaleについて

Sex is Power Scale(SIPS)というのがありまして、これ重要な気がしています。詳しくいうと、「自分の性は力の源泉だ」(Self-sex is Power Scale(S-SIPS))と「女性一般の性は力の源泉だ」(Woman-sex is Power Scale(W-SIPS))の二つに分かれています…

【論文紹介】誰かの性的客体となることを通した女性たちの性的主体化について

Mindy J. Erchull & Miriam Liss, 2014, "The Object of One’s Desire: How Perceived Sexual Empowerment Through Objectification is Related to Sexual Outcomes", Sexuality & Culture 18:773–788 (=「誰かの性的客体となること:性的客体化を通した性…

ジェンダーから見るセカイ系:戦闘少女の登場と少年の受動性(2)

序章 1.セカイ系作品群をいまジェンダーの観点から論じることの必要性 1990年代後半から2000年代に生み出されたセカイ系は、基本的に男性が作る男性のための作品だが、そこでは戦闘能力としても精神的にも弱い男性主人公が繰り返し描かれた。圧倒的な強さを…

ジェンダーから見るセカイ系:戦闘少女の登場と少年の受動性

あるところに「本企画」として提出した文章なのですが、そういえばもう半年くらいたったのに音沙汰がないので、ダメだったのかなーと思っているところです。なので、公開。 セカイ系をジェンダーの観点からきちんと(体系的に)分析してまとめたものはなかっ…

好意的性差別について

性差別(sexism)には、「敵対的性差別」だけでなく「好意的性差別」もあるということを述べ、この二つを組み合わせた「両価性性差別尺度( Ambivalent Sexism Inventory、ASI)」を開発したのは、Peter Glick & Susan T. Fiske(1996)であります。 Peter G…

「ポストフェミニズム」と言うことの認識利得

(*単行本用の原稿として書いていたものですが、どこにも入らなくなってしまったので、ここにアップします。紙に印刷して本の形態で読む用の原稿であり、ブログ用の文体じゃないので、若干読みづらいかもですが、すいません) 「ポスト(post)」とは、基本…

フェミニズム原理の日本社会への浸透

例によって、或る原稿のために書いた文章ですが、全面カットすることにしたので、ここに掲載させてください。どこかで今後使う可能性もあるので、ここ間違っているよ、とか、ここの論理展開が変ではというのがあったら、指摘してもらえるとありがたいです。 …

【人の論文紹介】伝統的男性役割(5側面)/新しい男性役割(4側面)の心理学的解明

本日の日本女性学会のMLでも、男性役割についての議論が回ってきていますが、2010年代の男性性研究(社会学者の参加が多い)を見ていると、社会学内部だけではあまりにも語彙(分析概念)が不足していて、かゆいところに手が届かないなぁという気がしていま…

フェミニズム・バックラッシュの歴史まとめ2

(2)人工妊娠中絶反対運動 アメリカでは、1960年代後半から、アメリカ合衆国憲法修正第14条を根拠とする女性の「プライバシーの権利」に基づいた中絶合法化を目指す運動がみられるようになった。1970年には妊娠中の未婚女性ジェーン・ロウ(Jane Roe)[1]ら…

フェミニズム・バックラッシュの歴史まとめ1

或る原稿のために書いた文章ですが、ざっくり全面カットすることにしたので、ここに掲載させてください(ウェブページで読む用の文体ではないので若干読みづらいところはあるのですが)。 のちほどどこかで使う可能性があるので、「ここの事実認識間違ってい…

ニヒリズムの極北ニーチェの魔力

0.人生を変えるものとしてのニーチェ 私は高校生の時にニーチェ思想にぶち当たってしまったために、人生が変わってしまった感がある。いや、そんなことを言えば、それ以外にも色々なあやまちはあったのであって(思想的に「あやしげ」(*)な人にばかり恋…

社会構築主義以降の社会記述法 ストラザーン『部分的つながり』に見るハラウェイの可能性について

今年の夏は海外出張もなく(=研究費が取得できていないということ(泣))、自宅時間がけっこうとれたので、読みたかった本をたくさん読めました。とっても幸せであります。夏休み一生続けばいいのに。と願ったところで続くわけでもないので、自分の中の区切…

【翻訳】Cotter, et. al., 2011 「ジェンダー革命の終わり?1977年から2008年の性別役割態度について」

David Cotter, Joan M. Hermsen, Reeve Vanneman, 2011, "The End of the Gender Revolution? Gender Role Attitudes from 1977 to 2008", American Journal of Sociology, Vol.117:259-289. 本文はここから入手できます http://www.vanneman.umd.edu/papers…

【翻訳】Pamela Aronson 2003「フェミニストかそれともポストフェミニストか?フェミニズムとジェンダー関係に対する若い女性の態度」

Pamela Aronson , 2003, “Feminists Or “Postfeminists”?Young Women’s Attitudes toward Feminism and Gender Relations”, Gender & Society 17(6):903-922.(本文はインターネット公開されていないので、お近くの大学図書館で。) 高橋によるこの論文の簡…

【翻訳】Yang, G., 2016, 「ハッシュタグ・アクティビズムにおける語りの主体:#BlackLivesMatterのケース」

Yang, G. (2016). Narrative Agency in Hashtag Activism: The Case of #BlackLivesMatter. Media and Communication, 4 (4), 13-17. ( https://repository.upenn.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1500&context=asc_papers ) アブストラクト ハッシュタグ…

『天気の子』の物語原理の見えにくさ:これまでの新海作品から『天気の子』へ  

*ネタバレありです。 1. 新海誠はロマンティックの極北であり、切なさの巨匠だ。 ロマンティックなものは、乖離的態度で論理を楽しむという鑑賞態度を拒む。ノレるかノレないかだけが問題になってくる、それがロマン。 80年代的ポストモダンは「距離化し…

一般女子に受けの良い『おっさんずラブ』について

腐女子でない「一般の女の子」の『おっさんずラブ』(以下、さしあたり2018年4月21日‐6月2日に「土曜ナイトドラマ」枠で放映された前7回のドラマを指す)好き率が高い。 今年(2019年)のゼミ中や、講義後に個別的に話に来てくれる女の子たちとの雑談のなか…