ポストフェミニズムに関するブログ

ポストフェミニズムに関する基礎文献を紹介するブログ。時々(とくに大学の授業期間中は)ポスフェミに関する話題を書き綴ったり、高橋幸の研究ノート=備忘録になったりもします。『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど :ポストフェミニズムと「女らしさ」のゆくえ』(晃洋書房、2020)、発売中。

恋愛の主客のジェンダー非対称性の論理的前提となっている「女性は存在そのものとして価値がある/男性にはそのような価値はない」というジェンダー非対称性についてのあれこれ

ytakahashi0505.hatenablog.com の続き。恋愛においてはなぜか男性が「手を出す」/女性が「手を出される」というように、男性が主体で女性が客体であるかのように表現されるという社会的事実があるということを見てきました。これがどういう意味論をなして…

恋愛に性別役割は必要か? 

1 なぜ「男は『手を出し』、女は『手を出される』」という慣用表現が成りっているのか ジェンダー論関連の授業を大学やっていると、「異性愛的な恋愛や性の場面でよく言われる『手を出す/手を出される』や、『お持ち帰りする/お持ち帰りされる』という主…

「枕営業されること」とか「女子割」とかについて:女性向け記事サイトの記事に関するメモ

女性向け記事サイトが充実しておりますよね。 そこで今日収集した、興味深い話をまとめておこうと思います(メモ代わり)。 telling.asahi.com 「おっさんたちにすれば純愛のつもりかもしれないけど、女の方が立場が下なんだから断れるわけない。偉くなった…

プロテスタントにおけるロマンティックラブとは何なのかまとめ

1. ytakahashi0505.hatenablog.com 前回、ノッターさんのご著書を論点整理しながら、欧米のプロテスタントたちが確立した狭義の意味での「ロマンティック・ラブ」が日本において成立したことはなかったということを論じてきました。 今日は、その狭義の意…

『アイドルになりたい』(2017、中森明夫ちくまプリマ―新書)の問題点

アイドル幻想を少女に押し付ける大変に気持ち悪い本:『アイドルになりたい』(2017、中森明夫、ちくまプリマ―新書) 私は基本的に、露骨な批判は書かない人なのですが、これはあまりにも問題なので、指摘しておいた方がいいような気がしました。 問題点は、…

本『性的モノ化とは何か(仮)』の趣意書  

なぜ性的モノ化をテーマにした論文集を企画するのか この数年間で、オンライン上のフェミニズムである「第4波フェミニズム」が登場し、存在感を増してきている。第4波フェミニズムのなかの中心的論点の一つとなっていると考えられる「性的モノ化」を主題とし…

ナオミ・ウルフ(2012=2014)と新しい唯物論フェミニズム

ところで、ナオミ・ウルフ(2012=2014)読まれました? 書名だすと通報される可能性があるので書きませんが。私は今、大学生の性調査を並行してやっているところなので必読文献の一つとして読んだのですが、思わぬ収穫あり。意外にもここで「あぁ新しい唯物…

アメリカの10代の性行動の消極化は1990年代から継続中:NSFGデータ分析の報告書から

1. ytakahashi0505.hatenablog.com の続きです。 とりあえず、アメリカの疾病対策予防センター(center for disease control and prevention, CDC)のnational center for health statistics(NCHS)がやっているNational Survey of Family Growth(NSFG)の…

批評界隈の「圧をかける」というあり方について:マッチョさとどう折り合いをつけるか

1. 新情報を提供するタイプの文章ではなく、ある程度知られていることに関して「論じる」ようなタイプの文章を世に出すときって、「書き手である私はこのことについてはよく知ってますから、これだけ見てますから、ここまで考えて書いてますから」というの…

アメリカにおける性行動の不活発化:GSSデータ18歳から44歳の成人男女を分析した論文の紹介

1.概要 性行動の不活発化は、アメリカでも起こっています。 Peter Ueda, Catherine H. Mercer, Cyrus Ghaznavi, Debby Herbenick, 2020, "Trends in Frequency of Sexual Activity and Number of Sexual Partners Among Adults Aged 18 to 44 Years in the…

プロテスタンティズムの倫理とロマンティックラブの精神:デビッド・ノッター『純潔の近代』の論点整理から

1.近代的主体を構成する原理としてのロマンティックラブ かの有名なプロ倫(『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』)にオマージュを捧げつつ、「プロテスタンティズムの倫理とロマンティックラブの精神」を、現在語るべきだという話をしたいと思…

『エヴァ』は身も心も一つになることを称揚している作品なのでは:エヴァ解釈についての補足

エヴァ解釈の話。 ytakahashi0505.hatenablog.com 私は前回のエントリーで、「人類補完計画は、人類の融合と性的「融合」(セックスのこと)を重ね合わせて表象されているが、主人公のシンジにはその誘惑をふりはらうことが期待されていた。ミサト、リツコ周…

後期近代における恋愛論の重要性1

1. 個人の「自由」の拡大が共有された社会的な「善」になっている現代において、恋愛や性といった「個人的なもの」をめぐる議論は、ますます重要になっている。 再帰性が高まる後期近代論者のギデンズ、バウマン、ベックらが親密性や愛についての論考を書…

LAMP IN TERREN

最近のロックだったらLAMP IN TERRENがいいですって教えてもらっていたのだが、この数日しっかり聴き、それ以降、打たれてけっこう茫然自失している。 松本大が書く詩の特徴は、「キミ」が具体的な像を結ばないところにある。これは確信的にやっていると思う…

男性オタクコンテンツにおける距離のパトス:性的比喩で描かれる人類補完計画の考察から

人類補完計画とは何だったのかを考えていたら、男性オタク向けコンテンツにおける「純愛と性欲の間の距離のパトス構造」とでも呼ぶべきものがあるのではないかということに思い至りましたが、とりあえず、ずーっと人類補完計画の話で、距離のパトスについて…

承認欲求とは何か2:なぜ人はアイドルになりたがるのか

ytakahashi0505.hatenablog.com ( 一応続きだけど、内容的には上記を読んでなくても分かるようになってます。つまり、あんまりつながってない。) 1. 現代の承認欲求について主題的に扱っている本として、 山竹伸二, 2011, 『「認められたい」の正体:承…

承認欲求とは何か(社会心理学講義で喋ったこと+α)

承認欲求について喋った回の内容を書いておきます。 1. とりあえず、承認欲求はマズローらパーソナリティ心理学によって、こう整理されてきました。(下図は『心理学』有斐閣、2013、p.194より引用) 下位の欲求が満たされることで、より上位の欲求が湧い…

合意形成プラットフォームでのフェミ議論とかできたら面白いんだけどなぁ、技術者求む!

合意形成プラットフォームvTaiwanのような仕組みで、現在のフェミニズム的議題をめぐる布置のようなものを描けたら面白いなと思った。 vTaiwanの仕組みの詳しい説明として、こちらがわかりやすい。 https://note.com/a28szk/n/n0c23db878c48 他のSNSと同じよ…

ネオリベラリズムとは何か1:資本のグローバリズムによるネオリベラリズム政権の登場(全3回の予定)

ネオリベとか新自由主義という言葉は、近年グローバリズム批判と政権批判のさいによく聞くワードですが、バズワードと化しているところがあります(なぜバズワードになっているかというと、端的に言ってしまえば、広義の意味での左翼は、マルクス主義が凋落…

『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど』著者解題(2020年12月17日)

*某フェミニズム研究会で拙著の検討会をしていただきました。その時に出した著者解題をアップしておきます。 著者解題 高橋幸『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど:ポストフェミニズムと「女らしさ」の行方』(2020、晃洋書房) 概念整理 ポ…

1980年代のポスター批判運動を知ろう(『ポルノ・ウォッチング:メディアの中の女の性』1990年、行動する女たちの会)

1980年代のフェミニズムによるポスター批判運動がどのようなものであったのかについては、『ポルノ・ウォッチング:メディアの中の女の性』(1990、行動する女たちの会)を読むとよくわかります。 この本は、大変ユーモアにあふれています。怒りで動いてはい…

男性の家事育児時間の2010年代の動向について

私と同年代の30代くらいの男性は、けっこう家事育児をやっているという話をよく聞くようになりました。そのことを統計的に実証している論文があったので紹介。 渡辺洋子(2016)「男女の家事時間の差はなぜ大きいままなのか─2015 年国民生活時間調査の結果…

【議論のための概念整理】「性差別」とは何か:社会科学的な用語としての「性差別」

1.「差別」とは何か日常語として理解されている「差別」とは、「相手の属性に対する偏見ゆえに、相手を低く評価したり相手をおとしめたり、社会的待遇を変えたりすること」くらいの意味だろうと思います。 ただし、社会科学においては「差別」という語は、…

赤十字はどういう若者向けポスターを作ってきたのか

#シンこれフェミ 当日に使うかもしれない参考資料たちです。 1.赤十字社とオタクの関係に関する全体的なざっくりした流れ 日本では、1969年に売血が終了。以降、日本では売血は禁止。献血の「記念品」として、クオカードや図書券が渡されていた時期もあっ…

認識的不正義:「表象はなぜフェミニズムの問題になるのか」(小宮友根)(基礎文献4)の読解と考察

1.認識レベルの不正義 websekai.iwanami.co.jp 上記の小宮論考は、私たちがいま使っている言語体系や思考枠組みにおいて、女性に対する暴力や抑圧を言い表す言葉が不十分であるという「認識的不正義」があるということを論じたものです。 ・小宮さんが「コ…

#シンこれフェミをやる目的(高橋の理解):当日のパワポの一部を公開

#シンこれフェミをやる目的(高橋の理解)

【#シンこれフェミ 3-1】ASAに見る、広告における性別ステレオタイプ表象の自主規制

1. 社会における表現の問題に関しては、「規制すべきか否か」をバトっていても、あまり意味はありません。「表現の自由」と「人権保障」の対立が起こったときに本当に議論すべきことは、表現のインフラを具体的にどう設計していくのか(既存の制度のどこを…

【#シンこれフェミ 3-2】公的広報におけるジェンダー表現ガイドライン策定の経緯と現在:広告規制に関するこれまでのジェンダー論の議論1

90年代後半に、国及び地方自治体の行政機関における広報ガイドラインが策定され運用されてきた経緯がざっくりとまとめられている論考として、ジェンダーの観点からメディア論研究をしてこられた大家・諸橋先生の以下のような論考があります。 www.koho.or.jp…

【#シンこれフェミ 3】規制の問題を考えるときには、まずは「わいせつ」と「性差別」を区別しよう:堀あきこさん「性表現の規制をフェミニストは求めていない」(基礎文献1)を読んで考えたこと

wezz-y.com 1.「わいせつ/性差別」の区別は重要 まず、堀さんは「わいせつ」と「性差別」を区別されています。これ重要です。 堀さんの議論によると、性器表現などの「わいせつ」は法規制されてきたが、フェミニズムにとっては「わいせつ」を規制すること…

【#シンこれフェミ 2】#シンこれフェミにご参加のみなさまへ(ご挨拶&ウェルカムメッセージ)

1.自己紹介 #シンこれフェミ にご関心を持っていただきありがとうございます。 私、高橋幸は、フェミニズムを研究している人間です。 アカデミックの世界に15年くらい住んでいる関係で、 日本の学的なフェミニズムで、「だいたい」どんなような議論がなさ…