ポストフェミニズムに関するブログ

ポストフェミニズムに関する基礎文献を紹介するブログ。時々(とくに大学の授業期間中は)ポスフェミに関する話題を書き綴ったり、高橋幸の研究ノート=備忘録になったりもします。『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど :ポストフェミニズムと「女らしさ」のゆくえ』(晃洋書房、2020)、『恋愛社会学』(ナカニシヤ出版、2024)発売中。

親密なパートナーからの被支配感は男性の方が高いけど、それが精神的健康に影響しにくい

親密なパートナーからの被支配感は「(異性愛)男性」の方が「(異性愛)女性」より高いが、 「それは精神的健康に影響しにくい」(p.137)という研究結果が重要な気がしたので、メモ+紹介。

 

被支配感は次の尺度で測定されています。

上野淳子, 2021,「<研修会報告>女性と親密なパートナー間暴力:デートDV研究を通して」『女性心身医』Vol. 26, No. 2, pp. 135-139, p.138より引用

こちらの論文は、下記から読めます。
cir.nii.ac.jp

 

 DVは、たんなる暴力的行為の有無を問題にしているというよりも、物理的暴力や性的暴力、侮辱、非難、脅迫、束縛などの精神的暴力によって、人間としての尊厳を否定され、自由を奪われ、支配されるという問題。

 こちらの論文では、大まかには「暴力を受ける→被支配感→精神的健康を損なう」というバスが確認されているけど、このパスの具体的な効き方が男女でちょっと違うという発見は重要だなーと思った。

 男性は相手からの暴力を受けても、「支配されてる感」があっても、構造的な関係離脱可能性(=自由、すなわち経済基盤が強いのでなんなら別れても生活水準が保てるという根底的安心感)を持っているので、精神的健康の悪化になりにくいのかなぁ。