ポストフェミニズムに関するブログ

ポストフェミニズムに関する基礎文献を紹介するブログ。時々(とくに大学の授業期間中は)ポスフェミに関する話題を書き綴ったり、高橋幸の研究ノート=備忘録になったりもします。『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど :ポストフェミニズムと「女らしさ」のゆくえ』(晃洋書房、2020)、発売中。

ポストフェミニズムとは――Ana Jordan(2016)の定義――

フェミニズム、アンチ・フェミニズム、ポスト・フェミニズムの違いを概念化してくれている論文を紹介します。

 Ana Jordan, 2016, “Conceptualizing Backlash: (UK) Men's Rights Groups, Anti-Feminism, and Postfeminism”, Canadian Journal of Women and the Law, vol. 28, No. 1:18-44.

 https://drive.google.com/open?id=1mh3tR2DEYSxwIq9tBYOBNOsyyOO4dFw4

 

論文概要: イギリスで最もよく知られている父親権利運動(father’s rights group)である「(Real)Fathers 4 Justice 」(RF4J、2002-)のメンバー9人(男性8人、女性1人)へのインタビュー調査に基づいたフェミニズムバックラッシュ(アンチ・フェミニズム)/ポスト・フェミニズムの概念化。

 

 

ジョーダンは、経験的主張/規範的立場の2つのレベルでわけて、以下のようにまとめているのですが、

f:id:ytakahashi0505:20190102135316p:plain

Jordan 2016:33

 

私は、「経験的主張」は「現状認識/実践」を区別した方がより分かりやすいと考えるので(カント主義者なので)、規範/認識/実践の3つの次元で整理しています。

 

表 - 1「フェミニズム」、「アンチ・フェミニズム」、「ポスト・フェミニズム」の違い(Jordan (2016)を参考に高橋が作成)

 

フェミニズム

アンチ・フェミニズム

ポスト・フェミニズム

規範:ジェンダー平等は望ましい目標

×

 

認識:現代社会においてジェンダー不平等がある

女性が不利益を被っている

男性が不利益を

被っている

×

ジェンダー不平等はない

 

実践:集合的・政治的なジェンダーポリティクスが必要

集合的なフェミニズム運動が必要

集合的なアンチ・フェミニズム運動が必要

×

ジェンダーは政治的な問題ではない

 

・初出:日本女性学会大会(2018年)報告「『Can Cam』の「めちゃ❤モテ」に見られる2000年代日本のポスト・フェミニズム」(高橋幸) 

 

 

――――

その他、Jordan(2016)論文に関するメモ

・インタビュイーの属性:F4JのブランチのRFFJに属する、ホワイト・ブリティッシュで、専門職についている、30代から60代の半ばまでの人たち。。

 ・バックラッシュ(=アンチ・フェミニスト)的な性質と、ポスト・フェミスト的な態度の人とが混在。バックラッシュの人たちは、フェミの思考法(”The personal is the political”とか)をけっこう取り入れて使っている。

 時間ができたら追記します…。