ポストフェミニズムに関するブログ

ポストフェミニズムに関する基礎文献を紹介するブログ。時々(とくに大学の授業期間中は)ポスフェミに関する話題を書き綴ったり、高橋幸の研究ノート=備忘録になったりもします。『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど :ポストフェミニズムと「女らしさ」のゆくえ』(晃洋書房、2020)、発売中。

ジェントルマンとミソジニーの違い

(モテの話はちょっと、置いといて。)

 

ジェントルマン文化が家父長制的(パトリア―キー)でパターナルだったことは歴史的な事実であり、ミソジニー女性嫌悪)感情を基盤にしていたことを否定することもかなり難しいと思います。が、現代のイギリス人男性は、ミソジニーを排したジェントルマンであろうとしております。

 

How Gentlemanly Thoughts Differ From Misogynistic Thoughts 

という記事が面白かったので、紹介。

 

~~以下から翻訳。かなり省略あり。面倒だから、時々そのまま英語。あと適当に必要な情報は補足してます~~

 

ベネボラント・セクシズム(善意的性差別もしくは好意的性差別)っていう語が、 Peter Glick and Susan Fiskeの1996年の研究で紹介されたね。ハフポス(  Huffington Post )の説明によると、どうやら「善意で女性を理想化し、その女性に対してパターナリスティックな態度を取ること」(“a paternalistic attitude towards women that idealizes them affectionately.”)らしい。

 

ジェントルマンは、セクシスト(性差別主義者)じゃない。じゃあ、どう違うのか、解説していこう。


1、レイディにドアを開ける 

Misogynist: “I will open this door for you because you are female, and your limbs are frail, and you haven’t built enough muscle to counteract the resistance of the door.”

(ミソニジニスト:僕、ドア開けるよ。だって、君は女性だし、君の腕力じゃ無理でしょ。)

 Gentleman: “I’m opening the door for you because I’m a respectable man. As it turns out, I open the door for everyone.”

(ジェントルマン:僕は、リスペクタブル・マンだからドア開けるよ。ま、僕は誰に対してもドア開けるけどね。)

 

2、最初のデートでディナーをおごる 

Misogynist: “I’m paying for dinner because I expect something in return…and it starts with the letter ‘s’.”

 

Gentleman: “I’m paying for dinner because it’s courtesy to pay for dinner anytime I invite a guest to join me. This is also why I’m successful in business.”

(ジェントルマン:僕が招待した人都のディナーではいつでも、僕が支払うんだ、それが作法だからね。)

 

*高橋コメント:courtesyってもとは宮廷での作法のことよね。現代でも使うんだ!と驚いた。あと、 最後に「だから僕はビジネスでも成功するんだよね」っていう一見するとよけいなのも入ってますが、ジェントルマンとは土地を持っている「郷紳(ジェントリー)」だけじゃなくて、19世紀以降金融で成功した人たちのことも指すので、ジェントルマン=ビジネスで成功という定義がここでは前提にされているのだと、解釈しておきます。

 

3、彼女が寒そうなときにジャケットを渡す
Misogynist: “I’ll give her my jacket because she forgot to bring one. Always forgetful. Typical of a woman.”

Gentleman: “She’s cold so I will give her my jacket to wear. It’s the polite thing to do.”

(ジェントルマン:寒そうな人にジャケットを貸すのは、礼儀正しいことだからね。)

 

4、荷物を上げるのを手伝う

Misogynist: “She’s a woman and doesn’t understand men like to pick things up and put things down.”
Gentleman: “I will ask her if she would like my help. If she doesn’t want it, I’m not offended.”
(ジェントルマン:彼女が助けてほしそうだったら、僕は手伝いましょうかって尋ねるよ。でも、もし彼女がそうじゃないなら、無理強いはしないな。) 


5、道路の車道側を歩く
Misogynist: “I walk closest to the street so I can check out other women driving by.”

Gentleman: “I walk closest to the street to protect her from traffic and splashing puddles, and according to  feminists,  ‘There is nothing sexist about cherishing or protecting another person.’”

(ジェントルマン:彼女を車の往来とか水たまりハネから守るよ。フェミニストによれば、他の人を大事にしたり守ったりするのは全然セクシストではないからね。)

 

~~以上、引用、翻訳ここまで~~

書いている人は、Kris Wolfeさん。最新刊は『女の子のハートを勝ち取る10の方法!』(2017)とかなんですけど、ええ、そこは置いといて、 上記の記事は、いい目の付け所だと思いました。

日常生活の細かいところで、かつ、みんながモヤモヤしているところを、ジェントルマン文化のタームですっきりと説明しています。 

 

現代的なジェンダー状況に合わせてジェントルマン文化を修正しながら使っていこうという動きって、具体的にはこういう感じなんだなー。